外的要因から見る時代考証

ジム城PBSによる金銀は10年以上続いているゲームなので、今と昔では全く環境が違う。
それは対戦考察やメタ的なことに関しても言えるが、それとは全く無関係な、外的要因も大きく関与している。
対戦の歴史が長いと、昔のことについて考察することはよくあるが、その際に忘れられがちなのが、この外的要因である。
これを踏まえた上で考察をしないと、間違った解釈で歴史を噛み砕いてしまう危険性があり、非常に重要なポイントのひとつだと筆者は考えている。

今回はそんな、直接的な対戦考察の話とは別な、外的要因が引き起こす今と昔の違いについて考察してみる。*1

  • 人口の多さ

最も大きな影響を与えている外的要因がこれだと思われる。
この後に並べる項目に関しても、人口の多寡によるものが非常に多い。
2015年現在、目安として大会の参加者は12人前後が相場と言ったところだが、10年前は64人制限のトーナメントがピッタリ埋まったりもしている。
チャットにも人が溢れ返っており、そのためチャットが4種類に分かれておりそれぞれ機能を果たしていたぐらいだ。
人口が多いと、とにかく色んなタイプのプレイヤー、色んなタイプのパーティが混在しているというのが大きな特徴である。
逆に言うと人口が少ない場合、弱くはないのにただたまたま使われないだけというポケモンや戦術がある場合があり、
そこを見落とすとメタを見誤り大会で突如登場したパーティにあっさり負けたり、欠陥構築が出来上がってしまうリスクが高い。

  • 情報網の発達

ジム城PBSが前提である以上、ネット環境はあったものの、情報網については今と昔で大差があったと言って良いだろう。
現在はSNSが発達し、TwitterSkypeでの高速かつ密な情報交換、情報提供、情報収集が容易であり、
また個人のブログを持っている人も多い。
しかし10年以上前はSNSの類はほとんど無く*2、一部の身内がメッセンジャーで繋がっていたり、
仲の良い人同士が個人チャットで顔を合わせていたぐらいである。あとは掲示板やメールの時代だ。
サイトやブログといったものを持っている人は一定数居たが、ログの公開や交流がメインであり、
考察記事を書いたり個別分析のようなコンテンツを作る人はそこまで多くはなかったと筆者は記憶している。
また、プレイヤーの情報リテラシーも決して高くない場合が多く、
有名な対戦考察サイトを全く知らず、ジムリーダーの城だけに来て対戦しているという人も少なくなかった。

  • ゲームに対する姿勢

ポケモンはそもそもゲームであるので、「楽しく遊ぶ」というのが普通である。
ゲームの発売から日が浅いほどその傾向は強く、時間が経てばだんだんと本気で考察をしたい人だけが環境に残り、
結果的にいわゆる「ガチ勢」の比率が増えて行く。人口自体は減少して行くものなので尚更である。
これは発売から10年以上経った現在から考えると逆に、「昔は今よりもよっぽどガチ勢の比率が少なかった」と考えるべきである。
これはその時その時に強いか弱いかだけでない、ポケモンの使用率やパーティの方向性に色濃く反映されるため、
非常に重要な要因のひとつであると筆者は考えている。
例えば、大会でのカビゴンのKPが昔は今ほど多くなかったのは、カビゴンの強さ自体が定着していなかったのもあるかも知れないが、
そもそも「カビゴンを使って本気で勝ちに行く」という人が今ほど多くなかったというのも一因としてあると考えるのが自然なのではないだろうか。

  • 数字に対する感覚

これは上記の「ゲームに対する姿勢」の一部とも言える。
一般にライトなプレイヤーほど細かい数字は気にせず「何となく」で対戦するものである。
数字を気にしないプレイをしていると、
「一撃で倒されるのに耐えると思って居座ってしまった」「相手のHPが目覚めるパワーで減っているのに気付かなかった」
といったことが頻発することになる。
確率に関しても顕著で、冷凍ビームを16発分打てば8割を超える確率で凍結を引き起こせるのに、
「凍ったら運勝ち」のようなオカルト的な風潮が広まってしまうこともある。
実際に10年前は、破壊の遺伝子や爆裂パンチ、威張ると言った技が今よりもずっと、過剰に忌避されていたようである。

  • ダメージ計算ツールの性能

現在多くの金銀プレイヤーは3代目魔人島のいわゆるダメージ計算ツールを使用していると思われるが、
そもそもこれが作られたのは2011年であり、それまでは、色々なサイトに他のダメージ計算ツールも複数あったものの、
食べ残しや黄金の実を持ったポケモンに対する確定数や、目覚めるパワーによる個体値減少を反映した計算、
全て通常ヒットした際に倒せる確率などまで出せるものは少なかった。
また、プログラミングに長けた人は個人用に計算ツールを作ることもあったが、それが一般に公開されることはなかなか無かった。

  • 情報・認識の共有

人口が少ないと、情報を浸透させることは簡単であり、それだけ共通認識を持ちやすい。
今現在の金銀界は、まさにそのような状態だろう。*3
これは、対戦人口が少ないことによる、数少ないメリットと言っても良い。
逆に人口が多いと、なかなか情報を全体に浸透させることは難しい。
逆に、一度浸透させてしまったことを取り返すのも困難である。
これは例えば、間違った情報が広まり浸透してしまった場合*4、それを覆すのには時間がかかってしまうというリスクがある。
正しい情報を一部の人が持っていたとしても、人口が多ければそれを一般に浸透させ共通認識とするのは容易なことではない。

  • 大会の影響力

人口が多ければ、当然大会は盛り上がり、その中での優勝は大きな価値を見出すこととなる。
また昔は、大会の頻度は今ほど高くはなく、年2回程度が相場で、
その代わり開催する際にはトーナメントシステムを拝借して大々的に、という風潮があった。
それにより更に大会の価値は相対的に上がり、大会の影響力は今よりも大きかった。
これはすなわち、大会で好成績を収めたパーティ、ひいては大会で好成績を収めたプレイヤーが環境に与える影響が大きかったと考えられる。

2015年現在はポケモンは第6世代まで存在するが、当然昔はそうではない。
これは、「金銀よりも後の世代からの戦術や考え方の逆輸入」がどれだけ出来るかに関わって来る。
戦術そのものが後の世代からダイレクトに金銀に伝わったという例は滅多に無いが、
「対面」「サイクル」をキーワードとした現在の最新世代での対戦から、
主に構築の組み方や立ち回りといった考え方の面を参考にするというのは、今の時代少しはあるのではないだろうか。

  • プレイヤーの年齢層

当たり前ではあるが、残念ながら金銀の対戦人口は昔と比べると大きく減少しており、
新規プレイヤーを取り込めた場合でも、全くの素人ではなく「以前何らかの形で金銀を遊んでいた」という人がほとんどだろう。
すなわち、今のプレイヤーは昔に比べてかなり年齢層が上がっていると考えられる。
逆に言うと、単純に10年前、我々は現在よりも10歳若く、金銀の年齢層的には当時中学生や高校生ぐらいが多かったのではないだろうか。
10代での思考力の変化はかなり顕著であり、14歳だったプレイヤーも5年経って19歳になることでかなり思考力が身に付くものである。
すなわちプレイヤーが若い場合、年齢層が上がると、単純に対戦のレベルが上がることに繋がる。
また、人間関係においても、「若さゆえの過ち」等と言うように、一般に若い頃の方が尖っており失敗する可能性が高い。
これによって、例えば意地になって自分から情報を遮断してしまったり、
実力はあるのに人間関係が上手く行かず対戦界を去ってしまったというプレイヤーも少なくないことと思われる。


他にも要因はあると思われるが、このような外的要因を鑑みた上で過去の対戦考察を掘り下げることで、見えて来るものはあるかも知れない。

*1:今まで金銀界でもあまりこのような考察は、記事としては無かったのではないだろうか?

*2:少なくとも金銀の対戦考察としては機能していない

*3:実際は、上記の「情報網の発達」によるところも大きいが。

*4:いわゆる「宗教」等と称される